初入賞
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前回のレースで何とか初めて完走することができたBBBレーシング。
ところで、間瀬の時は3人で走ったのでBBBレーシングでもよかったのだが
榛名では今まで通りマツと俺の2人で走っているわけなので
どうもチーム名がしっくりこないね…、ということになり
再度チーム名を検討することになった。
この頃、バイクの整備はいつもマツの家のガレージで行っていたので
マツの両親に対して、
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「いつも申し訳ないですね〜」
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という感謝の気持ちをこめて、チーム名を
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TEAM 勘太楼 RACING
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と決めた。「勘太楼」はマツの両親が経営してる寿司屋「鮨勘太楼」から取ったのである。
まぁ、マツのオヤジさんはいつも
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「このバイク、何キロ出るんだ?カブの方が速いんじゃね〜のか?」
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と言って、たいしてレースに興味を持っていたわけではなかったのだが…。
さて、榛名の'97シーズンも残すところ1レースとなった。
この頃になると、マツは徐々にラップタイムを縮めて45秒フラットくらいで
コンスタントに周回するようになっていたのだが、
俺は何をやってもラップタイムが良くならずに
完全にドツボにはまってしまっていた。
今考えれば、単にりきみ過ぎていただけなのことなのだが
とにかくあの頃は何をやってもタイムが良くならなかった。
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そんな俺の不甲斐なさにマツも愛想が尽きたようで、
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「今回のレースは俺がスタートライダーやる!」
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とか言い出したのだ。
俺のラップタイムが良くならないということと、
バイクの整備をマツに任せっきりということで、
俺の立場はかなり弱くなってしまい、
マツの言いなり状態になってしまっていたのだった。
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そして、レースの方はというと
初めてスタートライダーを務めたマツが、
無難にスタートは切ったものの、1周目のバックストレートにやってきた時には
やはり最後尾という状態だった…。
これって、俺たちの定位置なのかしら??
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その後、何台か抜き去ったマツだったが
一台のバイクに完全につかまったしまった。
そのバイクはSP仕様のTZMだったのだが
コーナーではマツの方が速くて
ストレートではTZMの方が速いという状態で
結局マツはこのTZMを抜き去るのに
走行時間の半分以上を費やしてしまった。
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しかし、そのTZMを抜き去った後は
どんどんと差が広がり、
そのTZMをもう一度抜き去り、周回遅れにした頃
マツの走行時間が終わり、俺とライダーチェンジとなった。
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走り出してはみたものの
ラップタイムが上がらないことから
どうも走りに自信が持てなくなっていた俺は
とりあえず転ばずに完走することを心がけた。
タイムが上がらないうえに転倒でもしたら
マツに何を言われるか分からなかったからだ。
もちろんできる限り速く走る努力はしたが
どうにもタイムは良くならなかったようだ。
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このレースは12月の上旬に行われたのだが
路面温度が低いせいなのか、やたらと転倒者の多いレースだった。
コースサイドには、転倒車両。
コース中央には、折れたステップ。
走る方は、どうしてもそれらが目に入ってしまい、
集中力を維持するのに精一杯だった。
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そして、太陽の位置が低くなり、西日がきつくなった頃、
コントロールライン上でチェッカーフラッグが振られた。
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初めて受けるチェッカーフラッグに少し感動しながら
バリ伝の中で巨摩郡が、世界チャンピオンになった時やったように
バイクのタンクの上に両手を添えてやろうかと思ったのだが
1コーナーがすぐそこに迫っていたので
慌ててバイクの向きを変えて
バックストレートに入ったところでそれをやってみた…。
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ピットに帰ってからコントロールタワー下にあるモニターで
順位の確認をしてみた。
すると…。
俺たちのゼッケン「28」がノーマルクラスの上から5番目に表示されていた。
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「えっ!?これって入賞圏内!?」
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意外な展開に少々興奮しながら表彰式が始まるのを待った。
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しばらくするとコース上で表彰式が始まり、
ノーマルクラスの表彰の時がやって来た。
ドキドキしながら待っていると、
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「え〜、ノーマルクラス第5位。TEAM勘太楼RACING!」
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という声が聞こえた。
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「やった!やっぱ入賞じゃん!!!」
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俺たちは初入賞にうかれながら表彰式に出た。
他の入賞者を見ると、2人で走っていたのは俺たちだけだった。
60分も1人で走りきるなんてタフだね〜、と感心した。
表彰式では、5位のたてと
賞品として冬用のシャツを貰った。
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それにしても参戦4戦目にして初入賞とは
思ってもみない結果だった。
へなちょこ走りなりに、最後まで転ばずに完走したことが
結果につながったということがとにかく嬉しかった。
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開幕戦直前に起きたマツの交通事故から始まった
俺たちの'97シーズンは、最終戦で5位入賞という
上々の形で締めくくることができた。
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余談だが、賞品としてもらったシャツは
襟のあたりが異常にチクチクして
着心地が最悪だったので
1度着たきり、しまったままになっている…。
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最後に、レースの写真、ビデオ撮影係として働いてくれた
モギちゃん、シゲちゃん、どうもありがとう!
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