サーキットを速く走る 3章

〜 複合コーナーの走り方 〜



一般的なサーキットは、ヘアピンと直線だけで構成されているわけではなく

直角コーナー、S字コーナー、複合コーナーなど

あらゆる形態、あらゆる大きさのコーナーと直線で構成されているものです。

サーキットを速く走る上で、

これらの複合コーナーの攻略方法は非常に重要なポイントとなります。



そこで、今回はS字コーナーの走り方を例にとって

複合コーナーの走り方について考えてみることにします。



下の図は、A地点からD地点へ向かうS字コーナーです。



図中の赤いラインは、S字の1個目のコーナーを突っ込み重視で走った場合、

青いラインは、S字の2個目のコーナーを立ち上がり重視で走った場合のラインです。

前章のヘアピンの走り方でも触れたとおり、

サーキットを速く走る上で重要なのは、

コーナーの脱出速度を高くすることです。

これは、単独コーナーに限ったことではなく、複合コーナーでも同様で、

上図に示すS字の走り方としても

青いラインが示す、2個目のコーナーでの

脱出速度を重視した走行ラインの方が、ラップタイム短縮にとって有利となります。



もう少し詳しく説明すると、

赤いラインで走った場合、1個目の左コーナー(B地点)を通過する際は

まだ減速に入ったばかりで、相当スピードが乗っていて

コーナーの出口(D地点)に向かってバイクの向きを変えることができるのは

2個目の右コーナー(C地点)の直前になってからです。

このラインで走行する場合、A〜DのS字区間で

もっともスピードが落ちるのは、C地点付近になってしまいます。



一方、青いラインで走った場合、はじめの左コーナーに進入する前に

十分減速されているため、B地点を通過する時点で

既に次の右コーナーへのアプローチ体勢に入ることができ、

赤いラインで走った時、ようやく減速が終わって

バイクの向きを変えようとしていたC地点では

既に加速体勢に入ることができていると言うわけです。

ちなみに、このラインで走る場合もっともスピードが落ちるのは

B地点付近となります。



この二つの走行ラインでのA〜DのS字区間の通過タイムを比較した場合、

赤いラインはS字の前半区間でスピードが乗っているのに対して

青いラインでは、前半区間でかなりの減速をしているので

もしかしたら、ほとんどタイムに差が出ないかもしれません。

しかし!

「だったら別に赤いラインで走ってもいいじゃん!」

と、思うのはNGです。

なぜなら、我々ライダーの目的はS字区間の通過タイムを競うことではなく

サーキット1周を走るラップタイムを競うことだからです。

サーキット1周のラップタイムを競う場合、

S字区間の脱出速度を少しでも高める事ができる

青のラインの方が、断然有利と言うわけなんです。



この考え方は、S字コーナーに限ったことではなく、

例えば、異なる半径の右コーナーが続く複合コーナーなどでも

コーナー攻略のポイントは、コーナー区間の脱出速度を高めること!

これに尽きます。



序章の中でも説明したとおり、

ラップタイムの短縮のためには、走行中の平均速度を上げなくてはいけないので、

もし、コーナー区間の通過タイムが同じ2種類の走行ラインがあった場合は、

少しでもコーナーの脱出速度を高めることができるラインを選択するべきです。

そのためには、すべてのコーナーを同じように全開で走っていてはダメで

図の例で挙げた、S字の1個目のコーナーのように、

時にはスピードを十分に落として通過しなければ

いけないコーナーもあると言うことをよく理解しておく必要があります。



一口でラップタイムを短縮すると言っても、なかなか奥が深いものです。

サーキットを走る上で、ラップタイムを短縮するには

「頑張らなければいけないコーナーと、頑張ってはいけないコーナーがある」

と言うことを覚えておいてください。



次回は、コース1周を速く走る方法について説明したいと思います。



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