ツ、ツメがぁ〜っ!!

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何度か練習走行を重ねるうちに、タイムは徐々に良くなってゆき、

4回目くらいの練習走行では、2人とも46秒台で走れるようになっていた。

(これでもまだ十分遅いんだけどね…)

一緒にライセンスを取ったモカちゃんも、何回か一緒に走ったりした。

彼は貰い物のツナギが小さくて

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    「ヒザがまがんないぃ〜…」

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と嘆いていた。

一度俺のツナギを貸して走らせてみたら、なんと自己ベストを1秒も短縮してきた。

ピットに帰ってきたモカちゃんの第一声は

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    「すごい!ヒザが曲がるよ!!」

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だった。

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こんな感じで練習走行を繰り返していたある日、事故は起きた…。

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練習走行前日の夜遅くまでバイクの整備をしていて

あまり寝ないで練習走行に行った日のことだった。

いつも通り練習走行を終えて、マツの家に帰ってきた。

例によって、もぎ〜からバイクを降ろそうと思った時、

バイクのフロントフォークを握った俺の右手親指に激痛が走った。

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    「いってぇぇぇええええっっっ!!!!」

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何が何だか分からずに、痛む親指を見るとツメの部分がかんぼつして血がふき出している!!

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    「な、なんじゃこりゃぁぁぁああああっっ!?」

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あんなもん見たら、松田優作じゃなくたってそう思うはずだ。

とりあえず、止血のために指の根元を靴ひもでぐるぐる巻きにして病院に向かった。

診療室で医者に見せたら

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    「ツメは何処ですか?」

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と聞かれた。

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    「はぁ?」

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と思い、よぉ〜く自分の指を観察してみた。

すると…

かんぼつしたように見えた俺の親指のツメは根元からきれいに無くなっていた!!

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    これって、生爪はがしっ!?

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ここで初めて自分の指がとんでもないことになっているということを理解した。

どうやらフロントフォークを握ったままタイヤを回転させたときに

指がディスクブレーキのスポーク(?)の部分にはさまれて

ツメが根こそぎはがされた上に、ツメの下の皮膚を切り、

ご丁寧に指先の骨までかち割ってくれていたらしい…。(実話だよ)

その夜病院からマツの家に帰って、ガレージの床をよ〜く探してみたら

きれいにはがれた親指のツメ君とご対面することができた。

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結局この怪我が完治するまでに半年以上の月日が費やされることになった。

幸い怪我をしたのが11月だったので、

次の春には何とかバイクに乗れる状態にはなっていたのだが…。

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練習走行でこけまくってるマツが大怪我をせず、

練習走行でほとんどこけなかった俺が大怪我をするなんて…。

 

怪我をした時、ガレージの床にできた血痕は

しばらく消えることなくそこに残り、マツの妹を恐がらせたらしい。

そして俺はこの後数ヶ月に渡り親指にギブスをはめ

お風呂に入る時は「グッドラック」ポーズをとることを余儀なくされた…。

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教訓:練習走行前日は十分な睡眠を取ろう。

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