’97 間瀬8時間耐久レース

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派手な転倒リタイヤを演じはしたものの、

耐久レースの面白さに目覚めてしまった俺達は

8月に新潟県の日本海間瀬サーキットで行われる

8時間耐久レースにエントリーすることに決めた。

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今回新たなライダーとしてスダちゃんが加わることになった。

スダちゃんは、6月頃から榛名で練習走行をするようになり

気がついてみたら、俺達とほとんど同じタイムで周回するようになっていた。

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新たなライダーが加わり、にぎわいが増してきたBBFレーシングではあったが

またひとつ問題が生じた。

チーム名がマズイ…。

“バイクばかふたり” ではなくなってしまったからだ…。

“バイクばかさんにん” ってことでBBSレーシングにしようかという案も出たが

今ひとつ面白みにかけていた。

またネーミングに困ってしまった。

そんな時またマツが提案した。

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    マツ:「BBBレーシングはどうだ?」

    カズ:「BBBって何だよ?」

    マツ:「イク か っかり」

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決定!!今日から俺達はBBBレーシング!!!

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レース当日は快晴で、まさに真夏の8時間耐久レースって感じだった。

間瀬はレース前の車検でライダーの装備までチェックする。

(榛名ではバイクしか見ないんだよねー)

スダちゃんはAGVの安〜いメットを愛用していたのだが、

検査係のおっちゃんに

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    「AGVかぁ。海外のメットは高いでしょー」

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と言われて、複雑な笑みを浮かべていた。

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レースは今回もルマン式グリッドで始まり、俺達のグリッドは前から3番目だった。

申し込みが早くてゼッケン3を貰うことができたというだけのことなのだが。

今回もスタートライダーは俺だった。

レース前マツから

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    「絶対ホールショット*奪えよ!」

    *) スタート直後の1コーナーに先頭で入ること

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と、気合を入れられた。

俺だってできることならそうしたいと願っていた。

そして、いざスタート!!

今回はエンジンのトラブルも無く、順調にスタートできた。

と思ったら、あれよあれよと言う間に速いライダーに抜かれてしまった。

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    「みんな、はえ〜な〜…」

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感心しながらシケインに進入。

そしたら目の前で2〜3台の多重クラッシュ!

慌ててそれを避けて、次のヘアピンにたどり着いた頃には

後ろから数えた方が早いくらいのポジションまで後退してしまっていた…。

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    「相棒よ、すまん。俺にはホールショットなんて無理だった…」

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そこで、まだ8時間もあるんだからとりあえず無理しないで走ろ〜。

と、気持ちを切り替えた。

何しろ間瀬を走るのはこの時が初めてで、どこを走っていいのやらさっぱりだった。

にも関わらず、目の前には俺とたいして変わらないへなちょこ君たちがいたので

それなりに楽しかった。

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スタートから40分経過。

ライダーチェンジで、俺はスダちゃんと交代した。

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始めて間瀬サーキットを走った感想は

所々路面が荒れてはいるものの、ミニバイクで走るには広くて楽しいコース

といった感じだった。

そして、コースの内側には畑が広がり

農作業のおっちゃんがピットロードを耕運機で疾走するなんて場面もあったりする

なんとも愉快なサーキットであった。

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スタートから2時間ほど経過して、スダちゃんが走っていた時のことだ。

スダちゃんはピットインのサインも出していないのにいきなりピットに入ってきた。

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    「スダちゃん、ど〜したん??」

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    「シケインまっすぐ突っ込んじゃってこけちゃった〜!」

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マシンを見たところ、これといった破損も無い。

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    「い〜よ!このまま走ってこ〜い!コケるな、このやろ〜!!」

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スダちゃんはそのままレースに復帰した。

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それからさらに1時間ほど経過して、俺が走っていた時のこと。

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    「ん〜、だいぶコースにも慣れてきたぞ。エンジンも調子いいし!」

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と、いい感じに周回を重ねていたその時

ホームストレートのど真ん中に変な筒状の落下物を発見した。

初めに見たときはそれが何かわからなかったのだが、

次の周回には、それがサイレンサー*であることがわかった。

*)サイレンサー : 排気の騒音を軽減させるための装置。マフラーの先についてるやつ。

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    「何であんなもんが落ちてるんだ??こんなところでコケるやつおらんだろ?」

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などと考えているうちに、ピットからライダーチェンジのサインが出た。

ピットに帰ってバイクを降り、自分のバイクをながめた時

何か違和感を覚えた…。

はて?このバイク、何かが違うぞ??

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    ああぁぁ〜っ!サイレンサーがついてな〜いっ!!

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ってことは、落っこちてたの俺のヤツかよ〜!!

おそらくスダちゃんの転倒時に、サイレンサーの付け根あたりにクラックが入って

走行中の振動でサイレンサーだけ脱落してしまったのだろう。

急いで駐車場の車から、予備のチャンバーを持ってきて付け替えた。

オッケ〜!いってこぉ〜い!!

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何とかチャンバーの付け替えもすみ、無事にレースに復帰できた。

それにしても、

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    「耐久レースって、面白いなぁ〜!」

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小さな(?)トラブルがあったものの、無事にレースを消化し

レース開始から6時間ほど経過した。

8回目のライダーチェンジでマツからバイクを渡された後、

どうも、エンジンの回転の伸びが悪くなっていた。

初めは

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    「これって熱ダレなのかな?ちょっとペース落とそうか?」

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としか考えていなかったのだが、

周回を重ねるごとに症状が悪化して、水温は80度以上まで上昇してしまった。

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    「こりゃマズイ。ピットインした方がいいのかなぁ〜」

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なんて考えていた周回のバックストレートエンドで

エンジンは完全に死んでしまった。

ピットまでバイクを押して帰ると、

ピットロード入り口までマツが来ていた。

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    「ど〜したん?」

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    「分かんないけど、エンジンがいっちゃったみたい!」

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ピットでとりあえずエンジンを開けて、ピストン交換をしてはみたものの

エンジンは一向にかからない。

どうやらクランクの方まで壊れてしまっているらしい。

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    「なんでだろ〜?熱でエンジン壊れちゃうわけ??」

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なんて考えながら、マシンをよ〜く観察した。

すると…、

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    ああぁぁ〜っっ!2ストオイル無くなってるぅ〜っっ!!!

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焼きつきの原因は2ストオイル切れによるものだった。(なさけね〜)

当時はまだ分離給油*で走っていたのだが

*) 2サイクルエンジンはガソリンとオイルを同時に燃焼させることで燃焼室の潤滑を行っています。

  あらかじめガソリンにオイルを混ぜておく給油方式を混合給油、

  ガソリンとオイルを別々に供給する給油方式を分離給油という。

レース前に1リットルのオイルを補充したっきり

オイルには目もくれずに走っていたのだった…。

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こうして、俺たちのレースは終了した。

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レース後、日本海に沈む夕日に向かって石でも投げてやろうかと思ったが

オイル切れでエンジンを焼きつかせた上に

これ以上寒いことはできないと思い、やめることにした。

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この時点でのBBBレーシングのミニバイクレース参戦記録:

2戦出場、2戦リタイヤ。

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だいじょうぶかなぁ〜…?

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