サーキットを速く走る 2章

〜 単独コーナーの走り方 〜



今回はサーキットの中でもっとも基本的なコーナーともいえる

ヘアピンを例にとって、速く走るための方法について考えてみます。



ヘアピンコーナーを走行する際、ライダーが行う動作は

減速 → 旋回 → 加速 と言った感じで、

バイクを走らせる上でのごく基本的な動作となります。

そのため、ヘアピンコーナーだけでタイムに差を出すと言うことは

なかなか難しいのですが、

基本的なコーナーだけに、ミスなくキッチリ走りたいものです。



コーナーを走る際、速く走るための基本は、

「アウト→イン→アウトのライン取り」 という定説があります。

これは、コースのアウト側いっぱいから

コーナーのイン側をかすめて、

立ち上がりではコースのアウト側ギリギリを狙って走ることで

旋回半径をなるべく大きくして、

コーナーの通過速度を上げる事を目的としています。

つまり、バイクの旋回速度は旋回半径が大きいほど

高くすることができるというものなのです。

そんなことを踏まえて、下の図を見てください。

これは、A地点からC地点へ向かうヘアピンコーナーです。




図中の赤いラインはコース幅いっぱいを

一定の半径で結んだ走行ラインで、これを定常円旋回といいます。

一方、青いラインは一般的なヘアピンの走行ラインです。

一見どちらもアウト→イン→アウトの走行ラインですが

この二つには大きな違いがあります。



その違いは何か?



まず、赤いラインの定常円旋回を行った場合

コーナリング中の旋回半径は一定なので旋回速度も一定となります。

一方、青いラインで走行した場合

コーナーの進入で、定常円旋回よりもやや奥まで突っ込んで

クリッピングポイント(コーナリング中に一番コーナーの内側に付く、Bのポイント)

の手前で、もっともスピードを落として小さい旋回半径でマシンの向きを変え、

その後は、徐々に旋回半径を大きくしながらマシンを加速させてゆく

ということになります。



両者を比較すると、コーナー進入では

赤いラインの方がスピードが乗っているので

一見、 「おっ!コーナー頑張ってる!」

と、見られがちですが、

立ち上がりでは、青いラインの方が

ぐんぐんスピードを上げて行けるので、

結局、進入でより多く減速した青いラインの方が速い!

と言うことになったりするわけです。



実際にサーキットを走る場合、

路面の状況や、続くコーナーへのアプローチによって

コーナーの走り方は変わってきますが、

基本的に、コーナーの脱出速度を高めるような

走行ラインを心がける方がラップタイムを稼ぎやすいものです。

特に、そのコーナーの後に長い直線がある場合などは効果・大です!



もうひとつ、立ち上がり重視でコーナリングした方が

ラップタイムを稼ぎやすい理由があります。

コーナーの進入速度を上げて、タイムを稼ごうとする場合、

必然的にフロントタイヤへの負荷が大きくなるわけですが

フロントタイヤが滑ってしまうと

ライダーは積極的にマシンコントロールをできなくなります。

できるのは、フロントタイヤがグリップを回復するのを待つことだけ。

一方、コーナーの脱出速度を上げてタイムを稼ごうとする場合、

リアタイヤへの負荷が大きくなる傾向がありますが

リアタイヤのスライドと言うものは、

ライダーの意思(スロットルワーク等)でコントロールできるものなので

フロントタイヤのスライドと違って、

限度はあるにせよ、マシンを大きく失速させずに済みます。

バイクと言うものは、基本的にリアタイヤがスライドする

オーバーステアな乗り物なのです。



ここまでで、コーナーを速く走ると言うことが

どのようなものなのか分かってもらえたでしょうか?

ヘアピンに限らず、どのようなコーナーを走るにしても

コーナーのどこでバイクの向きを変えて、どこから加速し始めるかを

イメージしながら走ることが大切です。

実際走ってみて、もし自分のイメージと走った感じが違っていたら

走りのプログラムを組み直せばいいのです。



一番良くないのは、何も考えずに走って

タイムが出ないから、もっとコーナーの突っ込みを頑張る!

みたいなパターンです。

タイムを稼ぐために何かを頑張る時は

より、リスクが低い方法をトライするべきです。

その方が転倒の可能性が減り、安定した走りができるからです。



最後に、走行ラインについて

ビギナーの人で結構勘違いしている人が多いので、

もうひとつ説明しておきます。

速く走るために、自分より速い人の走行ラインを真似する

という練習方法がありますが、これは半分正解で半分間違いです。

速い人の走行ラインを真似する場合、

その人がどこでブレーキをかけ始め、

どこでブレーキをリリースして、

どこからアクセルを開け始めたか…、

そこまでを理解して走行ラインを真似してみてください。

速い人の走行ラインを、ただゆっくりトレースしてみたところで、

そうそうタイムは上がるものではありません。



走行ラインとは、ライダーがどのような考えを持って

そのコーナーを攻略したかの結果であって、

そのようなラインで走ることが目的ではないと言うことなのです。



次回は、複合コーナーの走り方について書いてみます。



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